今回は 遺言書 (自分の死後の、自分の財産の処分方法について言い残すこと)
について、です。
今回の記事の登場人物は
A= 90歳過ぎた、おじいさん
B= Aの息子 (長男)
C= Aの息子 (次男)
、、、、、の3人です。
Aがそろそろ私も歳だし、いつお迎えが来てもおかしくない
遺言でも残しておこうかと思って、
今まで働きながらも私の面倒をよく見てくれた、
私の息子長男Bに
自分の死後、今私が住んでいる家をあげようと思って
① 「私が死んだら、Bに、私の今住んでいる家をあげます。」
と遺言書を書いて残したとしましょう。
しかし、Aはかなりボケていたために、その遺言書を書いたことを忘れてしまい
次の年(翌年)に、
私の息子の次男Cは、
無職で金がなくて困っていたなぁ、そうだ、だったら
自分の死後、今私が住んでいる家をあげよう!と思い立ち
② 「私が死んだら、Cに今私が住んでいる家をあげます。」
と、またもや、遺言書を書いて残してしまいました。
・・・・そして、そのあと、ほどなくしてAさんは逝ってしまいました。
この時点で、遺言書が①と②の2枚ありますが、
どちらの遺言書も
「Aの住んでいた “家” をあげる」
という内容ですが
もらい手は、①の遺言書はB、②の遺言書はC、となっていて、
違っています。
はたして①と②のどちらの遺言書が優先して有効になるのか?
というと、結論から言うと
② の遺言書が有効となります。
それはなぜかと言うと、
ちょっと民法1023条はっておきますので見てください。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
民法 第1023条
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、
後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
つまり、どういうことかというと
① と ② の遺言書はともに
「Aの住んでいた家を○○にあげる」という内容ですが、
さっきも同じ事を言いましたが、
もらい手が
① の遺言書ではB、②の遺言書ではC、と
なっていて、違っているので、内容が矛盾(抵触)していることになります。
このように遺言書の内容が 矛盾 している場合、
どちらの遺言書が “後に” 作られたのか? で
優先順位が決定します。
ということで、①の遺言書は撤回されたことになって無効となり
② の遺言書が優先して有効となります。
よってCが、Aの家をもらうことができます。
・・・・・・しかし、もしも
Aの残した遺言書①の内容が
「私が死んだら、Bに、
私の今住んでいる家が建っているところの “土地” をあげます。」
という内容だったのなら
① の遺言書も、②の遺言書も、両方有効となります。
なぜなら、
① の遺言書は「Aの土地を、Bへやる」
② の遺言書は「Aの家を、Cへやる」
といった内容になったので
もらい手は違っていても、もらえる物(財産)は
それぞれBは土地、Cは家となっており
内容が矛盾(抵触)するところがありません。
よって、どちらの遺言書が後に作られたのか? とかは関係なく
両方の遺言書はともに有効です。
*** 感想 ***
こうして、今回、遺言書についての記事を書きましたが、
(記事というか法律の問題みたいなことを書いてしまった)
遺言書なんて、実際に残されると
相続人(身内)同士の揉め事の種になりますので、
残さなくてもいい と思います。
どうせ不平等な財産分割内容が
遺言者の感情にまかせて書かれているだけですし。
基本的に自分の死後、自分の財産をどうするかは
それを相続する人同士で話し合って決めさせた方が
遺言書を残すよりも上手くいくものです。
それに遺言書(自分の死後の財産の処分内容)を残しておこうと
考えるくらい財産を持っているのであれば
自分が生きている間に、遺言書なんて書かずに
とっとと自分の相続人となりそうな人に
多少なりとも財産を分け与えてほしいものです。
自分が死ぬまでみんなをじらす気か?
自分が死んだ後のことを考えるよりも
今、自分がこうして生きている間に、何ができるのか?を
もっと考えていただきたいものです。
SH
<関連する記事>
<遺言 遺言書 相続 財産 資産>