江戸時代の話。
とある商人が、とある地方の役人から、お金を預かっていた。
そして、そのお金というのは、
その役人が勤める地域のお殿様の城に渡す金であった。
その金を役人から頼まれて、商人が一時的に預かっていたのだ。
しかし、その商人は借金などがあって、ちょっと経済的に苦しかった。
なので、その預かっているお金をなんとかして
自分の懐に入れたいけれども
そのまま横領したのでは、100%犯人が自分だと分かるし
間違いなく処刑される。。。。
なので、どうしようか考えて、少し工夫してみた。
まず、その役人から預かっている金を、役人に返す日が来る前に
金の入っている箱の蓋をいったん開けて
その箱の蓋の開閉する部分(木製)に
外から見てすぐには分からないように
さりげなくヒビを入れておいた。
そして、その箱の蓋を閉めておき、金の入っている箱を返す日が来て
役人に、そのまま渡した。
そして、その役人が、金の入った箱をそのまま城に持って行かずに
いったん、その役人が自分の家の貯蔵部屋に保管しておくのを
知っている上で
商人は役人の家に忍び込んで、貯蔵部屋まで行き
金の入っている箱の蓋をガンガン叩いたりして
簡単に壊して、中身の金を盗み出した。
しかし、取り出した中身の金の一部だけは
その役人の家の近所の家に、ワザと探せば簡単に分かるように隠しておいた。
なんでこんなマネをしたのか?
自分(商人本人)に、犯人の疑いがかからないように、普通の泥棒が
その役人宅へ、「金持ってそうだなぁ」ということで、たまたま
忍び込んだように見せかけるため、ということもありますが、、、、
あわよくば、その役人の家の付近に住んでいる人に
あとから犯人捜しが始まったら
自分の代わりに犯人の疑いがかかればいいなぁ~、とか考えたのだ。
そして案の定、そのあとすぐに事件は発覚して
犯人の疑いがかけられたのは、その役人の家に普段から用事があって
出入りしていた少年だった。
金の入った箱が保管されている貯蔵部屋の前を、たまたま窃盗事件があった
近日にうろうろしていたのを見かけた人がいて
それで、疑いの対象になってしまったのだ。
また金を保管していた役人の家の近所の家からも
隠されていた金の一部が発見されて
(これは、盗む際に商人がワザと隠した金ですね)
運悪く、その家は、その少年と親戚関係の家であり、疑いはさらに深まった。
そして、その少年は、とりあえず、見事に誤認逮捕されて
取り調べという名の、拷問を受けることに・・・
最初は、それでも、なかなか少年は自分がやった、とは認めなかったが
取調官からは
「とっとと、自分がやった、と認めて白状しないと
お前の親兄弟も同じ目にあうぞ!」
と言われ、家族からも
「頼む、お前がやっていなくとも、やったと認めてくれ!」
とか言われ、もうどうしようもないから仕方なく
「自分がやりました・・・」
と白状した。
しかし、自分がやった、と犯行(犯罪)を、一応認めたのはいいが
「どういった経緯で、どういう方法で盗んだのか?」というのを
しゃべらせてみても、ちぐはぐで、つじつまがあわなかった。
(当たり前、だって本当の犯人じゃ無いんだもん)
それで、取調官から、
「つじつまがあわない!この後におよんで、まだ嘘をつくのか? けしからん!!」
ということで
このあと、めちゃくちゃ、さらに拷問された。
「自分がやった」と、すでに認めているのに
詳細にどのように犯行におよんだのか、言えないということで
まだ拷問するのかい? もういいだろ?
・・・そして、少年は心身ともにボロボロになった。
で、その光景をハタから見ていた、他の取調官のうちの1人が
「なんか、コイツ、もしかして犯人じゃなくね?」
とか、言い出して、
それがキッカケで、いろいろ上の方で話し合った結果
「ちょっとコイツ本当に犯人じゃないかも、
他に犯人がいるのなら、そいつをちゃんと見つけなくちゃな!」
「あと、拷問されたお前も疑わしいマネしてたからこそ捕まったんだから
普段から、ちゃんとしていれば疑われることも無かった
余計な手間かけさせやがって、ペッ!」
といった感じで、
ボロボロになった少年は、ある日、「ポイッ!」と
放り出される形で解放されることになった。。。。
(捕まえた側からは、なんの謝罪もないし、なんの保障もないという・・・)
そして、取り調べた奉行所(警察署)の人達で試しに
金が入っていた箱と同じ物(レプリカ)を作ってみて
泥棒と同じく、外側からガンガンと叩いて箱の蓋を破壊して開けようとしたが
ビクともしなかった。
結果、偶発的に、忍び込んだ泥棒が、物理的に箱の蓋を壊して開けて
中身の金を盗み出すのは不可能。
他の何者かが、あらかじめ、箱の蓋に亀裂などを入れておき
少し壊しておいた、という説が有力になってきた。
それで、その細工が、アリバイ上、可能となる人として浮上してきたのが
本当の犯人である商人さんであった。
それで、さっそく、その商人を逮捕して、いつもどおりに
拷問してみたら、素直に犯行を認めて
つじつま通りに、経緯や方法を白状できたので
(先に冤罪で捕まった少年と比べて、「根性ねぇな?」って感じで)
「よしよし、ちゃんと白状できました◎」
ということで、その商人さんは
柱に手足を縛られて、脇腹をヤリで突かれて、処刑されました、とさ。。。
今回の話で、もっとも重要なこと は
江戸時代(初期頃)でも、真犯人を捜す(探す)ために
壊して開けられた箱と、まったく同じ材質のレプリカを
わざわざ作って用意して
試しに、外部から壊せるか、どうか、(うまくいくかどうか)の
実験をおこなった、ということです。。。。
(犯行現場の再現検証というのか・・・)
このような捜査の仕方は、江戸時代では
かなり現代的というか、画期的(斬新)と
言わざるを得ない、、、、のでした。
珍しい。
・・・しかし、反面、
誰かれ構わずに、犯人と疑わしい人を
とりあえず捕まえておいて、とりあえず拷問したことは
この時代、どうでもいい些細なことであった。。。。
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