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<江戸時代の訴訟>土地の所有権は誰にあるのか?

えぅぃ

 

 

 

 

今回は、江戸時代の民事訴訟 をひとつ

取り上げてみたいと思います。

200年くらい前のモノです。

 

とある町の中に、それなりに繁盛して儲かっている

雑貨屋があったのですが、

ある日、とある町人の男に訴えられました。

 

 

 

それで、その訴えの内容は、というと

どうやら、昔、その訴え出た男のご先祖様が

そこの町の中に所有地を持っていて

その土地を、当時の、その雑貨屋の主人(もちろん故人)に頼まれて

貸してあげて

そこに当時の主人は、今の雑貨屋を建てたらしい。

 

そして、土地を貸してあげたときに

「私は、あなたから土地を借りました」

と、一筆、その当時の雑貨屋の主人に書いてもらった証文までもらい

そのあと、しばらくの間、定期的に地代(土地の賃貸料)も

払ってくれていた。

 

しかし、その後、何十年かして

その訴え出た男のご先祖様の家が火事にあってしまい

その証文などはすべて燃えて無くなってしまった。。。

 

 

それで、しばらくの間、うやむやになっていたが

ここ最近のところ

現在の雑貨屋の主人は、

その店の建っている、私のご先祖様が貸してやった土地を

まるで、最初から(昔から)自分の土地であったかのような

顔をして、店を経営している!

 

なので、私が、

「もともと、そこの土地は、私のご先祖様が

当時の雑貨屋の主人に、貸してやった土地なんだぞ!

店を撤去して返すなり、店を撤去せずに

そのまま借り続けるつもりであるのならば

地代ぐらい払ってくれ!」

と言って、今の店の主人と交渉しようとしても

まともに取り合ってくれません。

 

ですから、どうか、ご奉行様(ごぶぎょうさま)

なにとぞ、その店の主人が現在において使用している

土地が、元々誰の所有物であるのか、明確にして

返還をうながすなり、お取りはからいくださいませ、、、

 

、、、といった内容でした。

 

 

ちなみに、ご奉行様、というと、奉行所

つまり、現代で言うところの

江戸時代の裁判所っていう感じでイメージしといてください。

町人の男は、当時の裁判所に、このように訴え出たのでした。

 

 

なんというか、一見、その訴え出た男の言い分だけ見ると

さぞかし、その、いけしゃあしゃあとしている

現在の雑貨屋の主人が悪い奴とかに思えてくるのですが、、、、

 

 

話を続けます。

 

それで奉行所は詳しく事情を聞くために

とりあえず訴えられた相手方の

現在の雑貨屋の主人を呼び出します。

 

そして話を聞くところによると、いわく

今、私の店が建っているところの土地は、間違いなく

当時の店の主人が、借りたのではなく、購入して得た土地であります。

 

しかも、その訴えてきた男の先祖とやらから

購入して得たわけではなく

別の人間から購入した土地であります。

 

そして、その購入した時に、払った購入代金の

領収書(証文)も、いただいており、今でも残っております。

ホラ!、、、ってな感じで

ちゃんとした当時の土地の購入証明書(沽券証文、こけんしょうもん)の

写しなども合わせて

奉行所に出してきた。

 

その上で、奉行所に対して

「最近、困っているんですよ。

その訴えてきた男が以前から、私の店の店頭まで直接来て

あ~だ、こ~だ、有ること無いこと、訳の分からないことばかり言ってきて。

 

私も客商売で、他にもいろんなたくさんのお客様が

日頃から店を出入りしているので、そういうところを見られると、、、

なにしろ信用第一ですから、

 

なので、今後、店の評判を落とすような迷惑行為をしないように

奉行所様の方からキツく、その男に言いつけてくださいませ!」

とか、頼んできた。。。

 

 

それで、奉行所は、今度は

訴え出た張本人の男を呼び出して

「むこうから、ちゃんとした土地の購入証明書の写しが出ているけれども

あなたには、そこの土地が、あなたの先祖のモノであった、という

証明書ないし、証拠はあるのか?

と聞いたところ、、、

 

「先にも、申し述べました通り

私の先祖の家は火事にあい燃えてしまい

その際に、その土地を先祖が、

その店の当時の主人に貸したという証文などの証明書も

全部、燃えてしまい残っておりません。。。

 

ただ、今でも残っているのは

私の先祖が書いて残した由緒書(ゆいしょがき)のみでございます。

ということでした。

 

 

そして、その由緒書というのは

その男の先祖が

「あの土地は、もともと私のモノで

それを、あの店の主人(当時)に貸してあげてるんだ」

と書き残した、紙切れのことですね。

 

 

はっきり言って、怪しすぎますし、いくらでも

訴え出た男が、ねつ造して作りあげることができるものですし

客観的な公平性に欠ける証拠ですよね・・・

 

しかし、それでも、訴え出た男は

なんとか食い下がってきて

奉行所に対して

「お慈悲を~」とか、いって泣きついてきたわけですが。。。

 

(ガチで、“御慈悲”とか、当時の裁判のやりとりの書面に

何度も書かれて残っているという・・・)

 

 

江戸時代ではありますが、当時の奉行所だってバカじゃないんですから

そんな由緒書みたいな証拠出されても、

奉行所側は

「 さすがに、ちゃんとした証拠が残っていないのであれば

キッチリと、それなりの証拠を出してきた店側に対して、

これ以上、あなたの主張を押し通すことはできないでしょ~ 」

というようなことを、さりげなく言ってきて

その男も空気を読んで、

仕方なく訴えを取り下げることになったのでした。

 

こういうのを帰伏(きふく)する、とか言うらしい。。。。

 

 

この江戸時代の訴訟の例を見て思うのは

昔も、今と変わらず、

ちゃんとした証拠を出してきた側、持っていた側が

有利になる、というところですかね。

 

というか、まぁ今回の裁判事例の場合

火災だかで証拠となるもの全部燃えてしまいました~とか、、、

たしかに江戸時代は火事は多いので(家木造だから)

実際に家は燃えてしまい、証文とかも燃えてしまったのかもしれないが

奉行所からしたら、

「本当に最初から証拠なんかあったのか?

嘘ついてんじゃないのか?」

とか思われても、う~ん仕方が無い。

 

言っていることが、本当だったとしても

火事にあったのが、大分前みたいですから、

当時すぐに、そのご先祖様が、後に揉め事にならないように

新たに証文を作るなり、なにかしらの対処をすべきだった。。。

 

 

あと、ちゃんと江戸時代の奉行所が

意外としっかり庶民の間の揉め事の解決などを

やっていたとか、、、

私にとっては、ちょっと驚きなのですが。

 

もっと庶民の間の揉め事に対して

横柄な態度で、いいかげんに対処していると思っていた。

やるとしても

武士の間の揉め事だけしか対処していない、と思っていた。

 

だって江戸時代だからね~。

ということで以上。

 

 

 

 

 

SH

 

 

 

 

何事も知ることで勉強になることばかりですね。

日々どんなことでも、勉強、インプット、大切なことです。

 

 

 

 

 

 

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