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今月給料一切いらないという誓約書は有効か?

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<質問の概要>


従業員が、

会社の社長から 「今月働いた分の給料は要りません」

という誓約書を、任意とはいえ、ほぼ強制されて、泣く泣く書かされた場合(賃金債権の放棄?)

この誓約書は有効とされ、従業員は会社へ、もう給料請求できませんか??



あと、会社は労働基準法違反とかになりますか?


 

 


<弁護士回答の概要>


本人が、真に自由な意思に基づいてその放棄をしたかどうかによります。



そして真に自由な意思に基づいて放棄したのかどうかは、

誓約書を書いたときの状況によって判断されます。 



たとえば、従業員にとってなんらかの不利益を免れたいという状況があって、

それとの引き換えで放棄をしたような場合は、

自由な意思に基づくとされることもあり得るでしょう。

 

 




強制的に書かされたという要素があれば、

自由な意思に基づくとはいえないという判断に傾きます。 



自由な意思に基づかないで書かされたという場合は、

賃金全額払いの原則 に反し労働基準法違反になる可能性が高いです。

労働基準法24条1項違反ということになりますね。



また、労働基準法は労使間での取り決めの最低基準を定めるものであり、

これに反する合意は無効になります。

(ちゃんとお互いに合意して書いたとしても無効になる・・・らしい)



しかし賃金の放棄は通常認められないでしょう。

例外的に会社に借り入れがあり、

かかる借り入れと賃金を相殺する場合などに、

合意が有効になることがあります(賃金の放棄とイコールのお話ではありませんが)。 



使用者側がどうしても強い立場にあるため、

労働者に不利益な合意については、

原則的に無効となるとお考え頂いたほうが良いかと思います。

 

 

 

 

<私の考え>


要するに、会社の経営者が、従業員に賃金債権の放棄をせまり、

従業員の同意の元、「私は今月の給料要りません」みたいな誓約書を書かせた場合、

いくら同意があっても 通常は 賃金を放棄したとは認められず、

あとからでも従業員は会社に賃金を請求できるということです。(理屈の上では)


でも、念のため、そういう誓約書に決してサインとかしないように、

また、その従業員が会社に給料前借していたとか、

そういった特別の事情があればまた話は別です。



それどころかそんなことを従業員に書かせた経営者は、

賃金全額払いの原則 に反したということで、

労働基準法違反で是正勧告なり受ける可能性があります。

(一応犯罪ですが、被害者が自分一人だけなら微妙かな)



実際に上記のような問題に直面して労働基準監督署に相談しても、

動くかどうかは知りませんが、

不当解雇関係に関しては全く動かない労働基準監督署でも、

証拠さえあれば賃金未払いに関しては、

意外とちゃんと動いてくれる可能性が高い と聞きますので(弁護士から聞いた、笑)

一応相談してみましょう。



是正勧告は無理でも、

できれば 労働基準監督署から勤め先の方へ電話して 給料の催促なりしてもらえば、

それだけで「労基に目を付けられた」とか思って、

ちゃんと給料くらい払ってくれるかもしれません。

というか経営者としては労基から電話かかってくること自体嫌です。



最後に今回の記事に関係のある労働基準法の条文でも載せておきましょうか・・・




(賃金の支払)

労働基準法第24条1項  


賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。




・・・長ったらしい文章ですが、

要は原則賃金は全額通貨で払えってことですね。(そのまま)

働いた分全額払わなきゃいけないのはもちろん、

物品で払ったらダメで、お金で給料払わないといけないってことですね。

ということは、ボーナスとか賞与もお金で払わないといけないんですかね?


棒にナス刺して渡したらダメなんですかね(笑)


(違法であろうがなかろうが、そんなことしたら、

帰宅時に、夜の会社の駐車場で、従業員に背後から刺されるかもしれませんね)



・・・今回はこんなところですか。

 

 

 

*** おすすめの本 ***

 

 

SH

 

 

 

本屋に労働基準法のいろんな入門書ありますが、

そんな本等より、この本一冊読めばいいと思います。

労働基準法の全体のイメージを上手く掴めます。



私も購入して読みましたが、

どんな内容かというと・・・



たしか桃太郎が鬼ヶ島に行く途中で、

キジやらサルやらをお供として雇います。(物語通りですね)



しかし、そのお供の対価としてキビ団子をやろうとしたら、

「それは賃金通貨払いの原則に違反していて、労働基準法違反です!」

とか指摘されて、労働基準監督署に駆けこまれたりして、

桃太郎が労働基準監督官に怒られたりする話です。



読んでいて面白い内容でもありますが、

労働基準法の肝心なところは抑えてありますので、

労働基準法の入門書としてはバッチリです。



労働基準法の勉学書で読みやすい本って本当に少ないものでして、

本当におすすめの本です。

 

 

 

 

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