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酒が入り冗談で100万やると言ってしまい、本当に請求された話

夜の世界

 

 

みなさんは、カフェー丸玉女給事件 という、

有名な民事裁判を知っているでしょうか?

 

今から、約85年ほど前(1933年のこと、昭和8年)

大阪のカフェー「丸玉」という、今で言うところのキャバクラ店で

そこのキャバ嬢の女に、客であった男が

 

「将来独立して、店持ちたいんだろ?

だったら400円(今で言う100万円近い額)出してやってもいいぜ!」

 

と調子に乗って、そんな大金も持ってないのに

そのキャバ嬢との間で約束(贈与契約)をしてしまったことがありました。

 

男の方は内心冗談だったのですが、そのキャバ嬢はちゃっかりしてて

男とのその約束(というか契約)を 書面にしたためていました。

(男に軽く一筆書かせていた)

 

 

それで月日が流れても、その客の男が

約束の金をいっこうに払ってくれる気配がないので

そのキャバ嬢がとうとう、

男のことを「約束の金払え」と訴えました。

訴えられた男の方は、一筆したためさせられたとはいえ

ほとんど冗談だったので、かなり心外だったみたいです。

 

この裁判はけっこう長引いて、大審院、

つまり当時の最高裁判所にまで、もつれ込みました。

 

 

 

 

ただの口約束で、金の贈与契約を結んでいた程度だったら

客の男が

 

「やっぱり、この話はなかったことにしてくれ、てへっ♡」

 

と、ひとこと言えば、その約束(契約)をなかったことにできるのですが、

(民法550条 書面によらざる贈与の撤回 が根拠)

この件では、

キャバ嬢が、しっかりと書面で約束(契約)を残してしまっているので

撤回して、なかったことにすることもできず

客の男は、簡単に、

その約束をなかったことにするのは難しいといえます。

やっぱり耳をそろえて大金を払わないといけないのか?

 

反面、キャバ嬢の方は

独立して自分の店を持ちたい!と思っているほどなので

かなり自分に自信があり、できる女だったのではないかと思います。

今回の贈与の約束の件も書面でしっかり残して

裁判まで起こすほどなんですから、、、、、

意外と、めんどくさい女なのかも。

 

 

 

 

しかし、しょせんキャバクラで酒が入って調子に乗った

金も持たない男が、キャバ嬢の気を引くために結んだ、

ざれごとみたいな約束。

 

 

キャバ嬢の女が、

しっかりその男との約束を書面に残そうが

普通に考えて、

そんな約束を真に受けるべきではないし

冗談まじりの約束なんかに

法的拘束力を持たせるべきではない、

という考えが、世の中では妥当でしょう。

 

それで当時の最高裁判所である大審院は

「 キャバクラにきた客である男が

酒が入った状態で大金をやるという約束をしたとしても

そんな冗談混じりで本人も覚えていないような約束にもとづいて

裁判所は強制的に男に金を払わせることなんてできません!

普通に考えてそんな約束ありえないって分かるでしょ?

しかし、男が、あとから金に余裕ができて、キャバ嬢に

約束した金を払いたいと言って、払うことは本人の自由なので

その約束が完全に無効とまでは言えません 」

 

、、、、という判決を出しました。

キャバ嬢に金を払う必要がないと認められたので

もちろん 男の勝訴判決 です。

 

このように客の男は別にそのキャバ嬢との約束を果たす必要もないし

裁判所も男に強制的に金を払わせることもできないが、、、、

男が、あとから

そのキャバ嬢に同情して懐にも余裕ができたりして

金を払いたくなって、払うのは男の自由ですよ・・・・

といった感じの、

このような誰からも強制されることもなく

約束を果たす果たさないも自由だ、という

なんだか、すごくゆるい債務のことを 「自然債務」 と言います。

 

つまり当時の最高裁判所は、

もし、今回の約束(贈与契約)をそのまま認めてしまったら

今後もいいかげんな状況で結ばれた冗談混じりの約束(契約)も

裁判所の力で強制的に履行させなければいけなくなってしまう・・・

しかし、だからといって

しっかりと書面で約束を結んだ証拠も残っているので

約束を無かったこと(無効)にすることもできないぞ~、困ったなぁ。

あっ!それなら、今回の約束(贈与契約)は

履行するもしないも約束した人の気持ち次第の

自然債務という形にして判決を出せばいいんじゃないかな?

と考えて、

そういう理屈づけをして、キャバ嬢の請求をしりぞけました。

 

まぁ約束を履行する・しないが

約束した本人の自由であれば

普通わざわざ履行しようと思う人もいないので

実際には契約は無効、債務もないに等しい、ということです。

 

 

 

しかし、もしも、今のこの現代で、

今回取り上げた“カフェー事件”と同じような

裁判が起こったとして

 

請求された側が

 

「調子に乗って冗談で、つい、女に大金やる、

という約束を書面でしてしまったけれども、

こんな約束なんて別にはたさなさくてもいいだろ?」

 

と裁判で主張しても

なかなか、その約束した内容が

“自然債務”にあたる、と裁判官に思われることはないでしょう。

 

自然債務だと判断されたカフェー事件のようなケースは

ものすごくレアケースですし、

しかも戦前の話ですので。。。。

 

今であれば、普通に裁判官から

 

「あなた、ちゃんと書面に残した上で

相手と約束(契約)したんだから、ちゃんと約束守ったらどうですか?」

 

とか言われて、

相手からの支払いの請求が、そのまま認められてしまうでしょうよ。

請求された側は間違いなく負ける。

 

酒の席で気分が高揚していようが

書面で一筆書いて、ちゃんと証拠を残してしまったら

約束を無効、または、無かったことにするのは

かなり難しいのです。

 

 

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口約束でも契約は成立するが、あとからその約束があったということを

立証するのが難しいので、なにかの約束をするときは

書面、つまり一筆書かせるなり、ちゃんとした契約書を作成するなりして

証拠を作って残しておくことを心がけましょう、

そしてどういったケースで書面証拠(契約書)が必要になってくるのか

、、、、ということがいろいろ書いてあります。

 

仕事上で客とそれなりの額の売買契約を結ぶときには

契約書とかはよく作りますが

もっと親しい関係、たとえば友人であるとか

仕事上であるのならいつも来てくれるお得意さん

となにかしらの約束をした場合には

書面で契約書をつくって残したいなどと言い出せないので

口約束で済ませることがあります。

 

でも、それは仕方ない。

書面でなにか残したい、とか言い出したら

相手に不快な思いをさせるのは間違いない ですし

今後、うまい話があっても持ってきてくれなくなる可能性が高いですので。

 

だからなんでもかんでも証拠が~、書面が~、契約書が~、と

うるさく言わないことですね。

本当に大切だと思うやりとりだけ、約束の内容が

あとから確認できるようにしたいから、と理由を付けて頼んで

書面にしたためてもらえれば十分です。

 

 

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