< 登場人物 >
A = 壺を割った人
B = 壺の所有者
Aが、Bの壺を誤って割ってしまった。
そしたらBは、Aに対して、当然
「 割った壺を弁償してよ!」、、、と
損害賠償請求できるわけですが、
もしBが、その割られた自分の壺を
誰か他の人に、、、、、たとえばCという人に
あげた場合、
そのCは、Aに対して
もらった壺(Aに割られた壺)の弁償額を請求できるのだろうか?
・・・・答えは「否!!」です。

なぜなら、割られた壺が、
まだBの所有物だった時に、Aに割られたので、
壺を割られた時点で所有者であったBにしか
壺の弁償をAに請求できない、
ということになっているらしいですので、、、、、
弁護士さんに聞いてみたところ。
どうやら、割れた壺をもらったからといって
賠償請求権までも一緒に
新しい所有者に自動的に移るわけではない、みたいですね。
じゃあ、Aに壺を割られたことによる
Bの持っている、Aに対する壺の弁償請求権、、、、、、
つまり、Aに対する壺の損害賠償請求権は
誰にも譲渡することができないのか?
弁護士さんに聞いたところ
壺の弁償額(損害額)が、すでにいくらか確定していれば
人に譲渡できるみたいです。
つまり今回の場合に照らせば、
壺の 弁償額 に関して
壺を割ったA(弁償する義務のある債務者)と
割られた壺所有者B(弁償請求権のある債権者)との間で
特に争いが無ければ
(Aも、自分が壺を割った、弁償すると言っている)
弁償額が確定しているということで
問題なくBは
そのAに対して弁償金を請求する権利を
他の人に譲渡できるということ。

たとえば、
「 その割られた壺の購入額は3万円だけど
割られた時は、ちょっと古くなっていたし
2万円くらいの弁償額払ってくれればいいよ 」
と、壺の所有者Bが言って
壺を割ったAが
「 うん、いいよ 」
と、素直に応じてくれれば
その壺の弁償額、つまり債権額は2万円で確定して
他の人に譲り渡すことができるようになる、という感じですかね。
こういうのを 債権譲渡 っていう。
まぁ、この場合に
ほぼ示談書、、、という形で
とにかく 書面 に
「 わたくしAは、Bの所有する壺を割ってしまったので
弁償金として、2万円支払うことを約束します! 」
と書かせて残した方がいいみたいです。
・・・というか、残さないといけないみたい。

あと、今回の場合で言えば
割られた壺の所有者Bは
壺を割った人Aの許可無く
Aに対する損害賠償請求権を、他の人にあげたり(売ったり)
することができるのですが、、、、、、
Bがその権利を他の人にあげた場合には、その際に
BからAに対して
「他の人にあなたへの権利をあげちゃいました」
と、一応一言ちゃんと 告げなければいけません。(通知すべし)
もちろん、この時にAが
「ちょっと待て、私の知らない誰かにやる、とか、そんなのダメ」
と言ってきたとしても
Bは
「俺が誰に自分の持っている権利をあげても、お前にはカンケーないだろ」と言って
Aを無視してたとしても、
問題なく他の人にAに対する権利をあげることはできる。
(有効に権利を譲渡したことになる)
つまり、とにかく拒否られてもいいから
Bが、Aに対して持っている権利を誰かにあげてしまったら
BからAに、
一言そのことを告げておかなければいけません。
でないと
Bから、その権利をもらった人が
Aに対して、上手く権利を行使することができなくなるので。
( Aが「お前のことなんて知らん」、とか言って
B以外の人が
もらった権利を行使しての請求を拒否してくるので・・・
そういったことがないように
事前にBがAに知らせとかないといけない、
そうすればAは拒否できなくなる)

こういう損害賠償請求権は
損害を受けた本人のみにしか使えない 一身専属権 かと
思っていたのですが、そうでもなかったみたいですねぇ。
一身専属権とは、本人のみに行使できる権利で
他の人にあげることができない権利、ということです。
精神的慰謝料請求権とか
家族から世話をしてもらう権利である
“扶養請求権”とかが代表的ですね。
・・・というか、弁護士さんいわく
最初に割った壺の弁償金額が決まっていない時は
壺の損害賠償請求権はBの一身専属権だが、
壺の弁償額が確定して、書面にいくら弁償するか
Aに書かせたら、一身専属権では無くなり
他の人にあげる(譲渡)することができる、と
話していましたが、、、、、
なるほど、なるほど、そう考えるのが1番妥当ですね。
おすすめの本
今回の話で言えば、
壺を割ったAが
Bの持っている自分への損害賠償請求権を
勝手に知らない人にあげたり
売ったりするのを 好ましく思っていなくとも、
原則、口を挟んで阻止することはできないのですが、、、、、
Bが、まだ誰かに
自分の持っているAに対する損害賠償請求権を
あげようとか思っていない段階の時に
Aが、Bに頼み込んで
Bの同意のもと
“債権譲渡禁止特約” というものを結んで
書面に残しておけば
それ以降、Bは、自分のAに対するその権利を
誰かにあげることは、できなくなります。。。。。
Aみたいな債務者にとっては
自分への請求権が、勝手に誰か知らない人に
ゆずられたり、売られたりするのを
一般的に好ましく思いません。
自分が債務者の立場になったつもりで考えれば
わかると思いますが、なんか嫌ですよね?
だからこそ
もしも、自分が債務者の立場になったと仮定して見れば
こういった特約を深く調べる意義はけっこうあるのでは?
と思います。
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