<質問の概要>
犯人が、他人の車を蹴って壊している器物損壊の犯行現場を、
ちょうど近隣住民に見られて警察にも通報されたとします。
それで近隣住民や警察に、「逃げるな!待て!」と言われて、
犯人が追いかけられて逃げるのは逃走罪など、
器物損壊罪以外の犯罪は成立しますか?
同じような状況で、
万引き犯が犯行後に追いかけられて逃走するのも、
同様に窃盗罪以外に逃走罪が成立したりしますか?
まぁ逃走罪が成立せずとも、上記の事例で、逃げてもあとから、
器物損壊罪や窃盗罪で捕まった場合、
それらの罪の量刑が重くなったりはするでしょうが。
以上、よろしくお願いします。
<弁護士回答の概要>
器物損壊した犯人や、窃盗を行った犯人が、
一般市民や警察に犯行が見つかって、その場から逃走しても、
そのこと自体が犯罪になるわけではありません。
逃走罪になるのは、例えば、
一度警察に捕まったのにもかかわらず、
逃走した場合に逃走罪が成立する可能性があります。
基本的に逮捕されたりする前であれば、逃走罪にはなりません。
犯罪を行った犯人が、その場から逃げたり、
自分の犯罪の証拠を隠したりしようとすることは、
それ自体は仕方がないことだと思われていますし、
それを罰する法律もありません。
しかし器物損壊や窃盗を行い、その場から逃げたりすれば悪質だとは思われるでしょう。
以上、参考までにお願いします。
<私の考え>
そもそも逃走罪ってなんなのでしょうか?
ということで、まず、ちょっと逃走罪の条文を見ていきましょう。
(逃走)
刑法第97条
裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、
一年以下の懲役に処する。
(加重逃走)
刑法第98条
前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が
拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、
又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
・・・という感じで逃走罪は主に 2種類 あります。
単純逃走罪(97条)に、加重逃走罪(98条)です。
このふたつの逃走罪の違いはなんでしょうか?
簡単に言うと・・・
まず 単純逃走罪 は、
判決が下って刑務所に入れられている人や、
逮捕されて留置場や拘置所に入れられている人が脱走した場合に成立する犯罪です。
それに対して 加重逃走罪 は、
上記で述べた逃走罪の対象となる人たちが、
ただ脱走したわけではなく、
手錠や牢屋を破壊したり、牢屋の見張りをしていた人を脅したり、
何人かで共謀して脱走した場合に成立する犯罪です。
普通に脱走した場合が逃走罪。
脱走の仕方が悪質だった場合が加重逃走罪になるわけですね。
(逃走罪+α=加重逃走罪ってことですね)
もちろん加重逃走罪の方が、単純逃走罪よりも刑罰が重いです。
上の条文見れば分かりますね。
ただ、単純逃走罪と加重逃走罪に 共通 していることがあります。
それはどっちも
“逮捕されて留置場や拘置所、刑務所に入れられた後に逃げたら”
犯罪として成立するということです。
ということでこの記事では今後、
主に“逃走罪”というと、
“単純逃走罪”を指していると考えて下さい。
話の内容を分かりやすくするために、
“単に脱走した”という事実に着目したいからです。
(今言ったことの意味が、よく分からなくともとりあえず、そう考えてください)
それで、
今から3年ほど前に逃走罪になるかどうか、
議論された事件がありました。
確か、横浜で強姦罪で逮捕された男が、
逮捕されてすぐに、警察官の取り調べを受けた後に
留置場や拘置所に入れられる前に、トイレに行った時に、
腰縄が緩くなったすきを狙って
逃げ出したことがありました。
まぁすぐに逮捕されたのですが、
なぜか“逃走罪”は適用されずに、普通に最初に逮捕された時と同じ
“強姦罪”でまた再逮捕されました。
なんで、逃走したのに“逃走罪”として逮捕されなかったのかというと、
逃走した際の犯人の状況が、
“強姦罪で逮捕はされたが、留置場や拘置所に入れられる前”だったので
逃走罪にはなりませんでした。
しかし、逃走罪が適用されないとはいっても、
逮捕された後に逃げたことで、
「反省の色なし、態様も悪質」とみなされ、
他にも強姦罪の余罪があったといえども、
裁判の判決で懲役11年の判決が出ました。
(強姦罪の通常の量刑相場は5~8年程度)
ということで、いろいろ逃走罪について説明したところで、
そろそろ今回の質問・回答の概要の説明に
移らせていただきます。
質問の概要の事例は、
まだ逮捕されていない時に逃げましたよね。
(見つかったから逃げただけ)
なので、逃走罪は一切成立しえません。
しかし、見つかった際に警察官を押しのけて、
逃げたりした場合は、逃走罪が成立しなくとも、
公務執行妨害が成立する余地もあります。
また、警察官に犯行現場を見つかり、
普通にその場で逃げなければ、せいぜい任意同行で済んだのに、
あとからどこの誰か特定された場合、
家まで警察官が来て“逮捕”される可能性が高くなります。
また逃げようとしたということで、
器物損壊罪や窃盗罪の量刑も重くなる可能性もあるでしょう。
(逃げても逃げなくとも、犯罪自体は犯していますし)
まぁ窃盗罪の場合で、軽微な万引きをして、
犯行が見つかり警察に通報されて、
怖くてその場から逃げたぐらいなら、
あとから身元が割れれば、
逮捕まではされず、電話で警察から出頭を命じられるだけで済むでしょうが・・・
・・・という感じで今回の記事は以上です。
なんか最後に言いたいことあったのですが、
記事書いている途中で忘れてしまいました。
SH
生きている途中で、どんなにがんばっても報われそうにないこともあります。
そういう壁にぶつかった場合は逃げてもいいと思いますが、
あと少しで乗り越えられそうな壁だった場合には
立ち向かってみた方がいいと思います。
9割逃げてもいいけど1割はがんばりましょう。
この本を読むとなんだか救われる感じがします。
まぁしかし物事から逃げるのにも
かなり勇気は必要なんですけどね。
とりあえずどんな事態におちいったら逃げることを考えるべきか
この本から学んでみましょう。
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<加害者 犯人 現場 逃走>