訴訟で相手の主張を否認する時は、理由と証拠も示せ!

 

 

<質問の概要>


民事訴訟で、相手の主張する事実を“否認する側”は、

否認するために証拠を提出する必要はないですよね?




例えば、原告(訴えた人)が、被告(訴えられた人)に

「お前に以前金を貸したから、その金を返せ」と主張してきたら

被告が、反対に原告に

「そもそもあなたから金なんて借りていないので、返す必要が無い」

金を借りたという事実を否認する場合・・・



被告は事実を単に否認するのみで

(この例えでは「借りていない」と一言いうだけ)

別にわざわざ“自分が原告から金を借りていない”という証拠まで

提出する必要があるわけではないですよね?




つまり相手の主張してきた事実を否認する側は、

相手の主張する事実を否定するために証拠によって

“事実が無かったこと”を証明する責任なんてないですよね?



以上、よろしくお願いいたします。

 




<弁護士回答の概要>


自分がやっていないことの証明は、悪魔の証明といわれていまして

証明することはできません。



しかし民事訴訟規則79条3項には

「準備書面において相手方の主張する事実を否認する場合には、

その理由を記載しなければならない」

と規定されています。



これの規定は

自分に主張立証責任が特に無い場合であっても

相手が主張してきた事実に対して

「こちらも証拠を出して(その)事実を否認した方がより良いですよ」

ということを意味しています。



否認する際には、

単に「そういった事実は無い」とだけ述べて否認するのでも

かまいませんが(これを単純否認という)

必ず、ではないですが、否認する際には

できれば否認する理由とともに、その理由を補強する証拠を付けて

否認した方が良い、とされています。(これを積極否認という)



以上、参考までに。

 

 

 

<私の考え>


民事訴訟において、相手の主張を否認する(否定する)時には

単に「違います、そんなことやっていません」と

ほぼ一言で否定するだけよりは

「違います、なぜなら~~だからです。

そしてそう言える証拠としてはこのような物があります」と

否認する理由と、それをできるかぎり補強する証拠を

付け加えた方がいいということですね。

そうすると裁判官への説得力が増します。


(ちなみに民事訴訟において

こういった当事者同士のやりとりは“書面”の提出でおこないます)




まぁ否認する理由くらいは普通述べますが

さらに否認する理由を補強する証拠まで出す必要があるのか?という点が

今回の質問の大事な部分になっている、と思います。




たとえば、原告が被告に

「お前の銀行口座に〇〇年の〇月〇日に金を振り込んで、金を貸した」と主張してきたら

被告は

「金なんて借りてない、

なぜなら原告の指摘する日に俺の口座に入金なんて一切確認できなかった」と反論して

加えてそのことを証明する証拠として

被告は自分の預金通帳の過去の入金記録を提出して見せればいいでしょう。




悪魔の証明 とは、つまり

自分がやっていないことの証明という意味ですが

この言葉はよく刑事訴訟上で耳にする言葉で

疑われている人に、「自分が指摘されたことをやっていない」ことを

証明をさせるのはなかなか難しく大変なことなので

“疑って追及している側が

疑われている人が「なにかやった」ということを証明する責任がある“

ということをしめす言葉なのです。




しかし民事訴訟上でも悪魔の証明という言葉はあてはまります。


 



つまり、疑われている人(追及されている人、民事訴訟では被告にあたることが多い)は

相手がなにか「やっただろ」と主張してきても、

単に「違います、そのような事実はありません」と

民事訴訟上は、そう述べるだけで十分なのですが

単に一言で否認するよりも

できるだけ自分がなにもしていないということの

信憑性<しんぴょうせい>を高めるために

(相手に主張、追及の矛盾点をつくために)

さらに、否認する理由を述べたり、

その理由を補強するための証拠を持っているのなら

積極的に提出した方がもっと有利になるよ、ということを私は言いたいのです。




まぁ相手というか原告の、主張というか追及が厳しくなってきたり

こちらも単に相手のいってくることを否定(否認)するだけではヤバいと思った時に

今回話したように

こちらも理屈をつけて否定したり、それを裏付ける証拠を出して否定する、

ということがよくみられます。




ただ、

なんとかして理由を付けて否認しなければならない、と思いこみすぎて

余計なことを述べたり、余計な証拠を出さないように気を付けましょう。



逆にそのようなことが相手にとって有利にはたらくこともありますので

慎重に考えましょう。

 

 

 

SH

 

 

 

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